治療は、その人自身を診ることそこにある個性を見極めること…②
おち夢クリニック 越知正憲院長のお話
2017年4月発行『i-wish ママになりたい 赤ちゃんを授かるための検査』
卵子の質だけではない!年齢を重ねると妊娠しづらくなるその理由とは
年齢を重ねると卵子の質が低下し、妊娠が難しくなり、流産しやすくなるということを多くの女性が知るようになってきました。
排卵されてくる1個の卵子で妊娠する力が下がってくるわけですが、質のいい卵子がないわけではありません。それは体外受精であっても変わりありません。
質のいい卵子が排卵されにくくなる理由の1つが、卵巣のセレクションが曖昧になってくることです。
年齢が若い時には、月経周期ごとに十数個から20個ほどの卵胞が育ち、その中から主席卵胞が決まり、排卵されてきます。年齢が若ければ卵子も若く、質のいい卵子であることが期待できます。
ですが、年齢が高くなると月経周期ごとに育つ卵胞数は少なくなり、その中から主席卵胞となる際のセレクションが曖昧になる傾向があります。つまり、一番質のいいものが主席卵胞にならなくなってくるということです。
この理由には、月経周期初期にスタートラインに並ぶ卵胞の大きさが揃っていないこともあるでしょう。そのため、卵をスタートラインにどう立たせるか、そこが大事になってきます。その1つとして、ピルを使って卵巣を休ませ、採卵する周期の卵胞のサイズを揃えるという方法があります。
ですが、さらに年齢を重ね卵巣機能が低下すると、ピルを服用したことが卵巣への負担になり、卵胞が揃うどころか、見当たらないという事態に陥ってしまうこともあります。そのようなケースでは、卵胞が揃っていなくてもピルは使わず、今周期は採卵ができる周期になるかをしっかりと見極めて、治療周期をスタートさせます。
目指すのは全卵胞採卵
年齢が高くなると、卵子の質が低下して、さらに卵子のセレクションがうまくできなくなってきますから、スタートラインに立った卵胞をできるだけ育てて、採卵することが必要になってきます。ですが、年齢を重ね卵巣機能が低下してくると、強い刺激をしても卵巣の反応が鈍く、多くの卵胞を育てることができません。
そこで、レトロゾール(もともとは閉経後の乳がん治療薬)を利用します。このレトロゾールは卵胞から分泌される女性ホルモンの産生を阻害する働きがあり、結果、卵胞のホルモンの感受性が高まり、分泌されるFSHが少量であっても発育を続けるようになります。そのため、FSHを十分に受けて成長した主席卵胞ではない4~5ミリ程度の小さな卵胞からも成熟した卵子を得ることが期待できます。
卵巣が卵胞をうまくセレクションできなくなっていることを、小卵胞から採卵することで補うことができるかもしれません。ですから、小さな卵胞だから成熟卵子が得られないと諦めず、小さな卵胞も丁寧に刺し、すべての卵胞から採卵することを目指します。それが移植できる胚の数を増やすことにつながり、妊娠への期待につながります。
最もよいタイミングで採卵する
自然周期、低刺激周期では、LHサージをしっかり見ることが重要です。
通常、エストロゲン(卵胞ホルモン)の値を見て、卵胞が十分に成長しているかを判断し、排卵を促すLHホルモンが上昇しているかを確認します。卵胞が十分に成長していると判断でき、LHが上昇していない場合は、GnRHアゴニストという点鼻薬で上昇させて、採卵手術日を決めるのが予定採卵です。
しかし、LHが予想より早く上昇してしまうこともあり、その場合、自然の成り行きに従って早急に採卵日を決めていくことがあり、これが緊急採卵となります。
採卵日を決めるのは、卵巣、ホルモンの状態です。採卵までの治療スケジュールは、患者さんの卵巣反応に合わせて決まるものです。ですから、最もよいタイミングで採卵することができるように、緊急採卵にも備えた態勢を常に整えることが重要になってきます。
0コメント