40歳の方は比較的妊娠します…その①
おち夢クリニック名古屋 桑波田先生のお話
『i-wish ママになりたい 40歳からの不妊治療』より
ご夫婦の子どもへの希望と治療をすることへの限界
治療後の選択肢も複雑に絡み合う、とても厳しいけれども意味深い治療です。
おち夢クリニック名古屋
桑波田先生
先生は、40歳以上の不妊治療で、どのようなアプローチを?
■40歳以上の高年齢では、不妊治療も難しくなってくると思いますが、先生はどのような治療を?
40歳以上と言っても、40歳の方はまだ比較的に妊娠されています。ただ、私が最初に不妊治療に就いた頃には、方法として、40歳でも自然妊娠する人もいますからタイミングや人工授精など、一般不妊治療からのステップアップ的な考えもありました。
しかし、体外受精であれば卵の状態も確認できることから、良い卵を少しでも早く戻し、妊娠して出産に結びつけてもらうという考え方になってきています。そして、それに向けてのチャンスを増やしてあげることが大切です。
■チャンスを増やす!?具体的にはどの様に?
例えば、高年齢になれば薬への反応も鈍くなってきますが、もともと私たちは低刺激の自然周期による治療法が基本で、そこからのベストな治療を考えています。
人はもともと月経周期ごとに、排卵される卵子は1個ですよね。それも採卵して体外受精をしてみない限り、確実に受精卵ができているかは分かりません。そのように体外で確実に見られることがチャンスの1つです。
さらに、小卵胞採卵という方法で何個か卵子を得られれば、受精卵が増える可能性が上がり、移植のチャンスを増やすこともできます。
■小卵胞採卵は、寺元先生が発案されたようですが、効果があるのですね?
自然の状態でも排卵に向けて多くの卵胞が育ちはじめます 。その中で、一番大きく育つ主席卵胞のみに注目して採卵していましたが、小さな卵胞から実際に採卵してみると、成熟卵子が採れることがあります。
■クロミフェンではどうですか?
不思議とレトロゾールでも、自然周期でも採れるのですが、クロミフェンは何かが影響しているのでしょうね。これまでもクロミフェンでは大きな卵胞からしか成熟卵子が採れなかったです。でもレトロゾールとか自然周期でお薬を使っていなくても、その周期にエントリーされた小さな卵胞から採卵してみると、結構、成熟卵子が採れるのです。
小さな卵胞から卵子が採れれば受精卵の数が増え、それが移植できれば妊娠のチャンスを増やすことができます。
ですから最近は、完全自然周期でも、小さな 卵胞からも採卵するようにしています。
■小さな卵胞でも中の卵子のサイズは変わらないのですか?
未成熟卵も多いのですが、成熟卵子もあります。卵子のサイズは変わりません。
寺元先生が、主席卵胞以外にも成熟卵子が入っているという話をされましたが、本当にその通りだと思います。実際に採ってみると質のいい受精卵ができて、いい結果に結びついています。
40歳以上の方への体外受精を、ある種のデータを持って一般不妊治療と同じ成績として意味がないとする先生もいらっしゃるようですが、決してそうではないと思います。
工夫して診ていくと、一般不妊治療と変わらないということはなく、体外受精による成果は大きいと思います。
■いい卵子の排卵を待 つと言う意味では、体外受精の間にタイミングをとるのもありですよね。
患者さんにとっては、選択肢としてあるかもしれませんね。治療と生活、気持ちとのバランスなども関係してくることでしょうし、選択肢もチャンスも多くあった方がいいと思います。
■小卵胞採卵の話は、院長の越知先生もずいぶん話されていますが、この方法自体、できる医師ばかりではないとお聞きしましたが?
小卵胞採卵を上手く行なうためには、医師の技術と専用の採卵針、培養室の技術などが必要です。
本当の意味での 大変さがやってくる… でも、子どもを育てる選択肢もある
■40歳は比較的妊娠するとのことですが、41歳の方はどうでしょう? それが42歳、 そして43歳…。45歳ぐらいが限界なのでしょうか?
やはり加齢とともに妊娠率は下がってきます。
とくに43歳くらいから厳しくなってきます。
40歳は比較的妊娠すると言いましたが、それはあくまでも不妊治療での妊娠率が分母となりますから、けっして割合として高いところの話ではありません。
それが40歳前後から妊娠するチャンスが減ってくるのと同時に、妊娠したときの流産率も増えてきます。染色体異常が増えてきますから自然淘汰ということでは仕方ないことですが、その流産というのも患者さんにとっては苦しいものです。
一番良い方法は生殖年齢の適齢期にしっかり結婚~妊娠・出産するのが理想で、41歳からの不妊治療となると、なおさら少しでも治療開始を早める、で きたら確実に卵の状態が診れる体外受精が良いと考えています。
流産の話をしましたが、43歳くらいから厳しくなってきます。希望を持って治療を受け、そこで妊娠しても流産をし、それを繰り返せば、さらに悲しい思いをします。
でも、流産があればあったで、まだいけるかもしれないという思いにもなりますから、できるかもしれない、できるかもしれないという思いで頑張り続けて苦労することもあり、それもまた大変なことだと思います。
■あきらめないといけない時も出てくるということですよね。その場合には、患者さんに何と言って?
基本的には女性である限り、月経があれば妊娠する可能性があると思っていますし、女性すべてに生む権利があると思いますから、『もうダメです』という言い方は、私はあまりしません。
ですが、『他の選択肢もあるのですよ』ということは伝えるようにしています。
『自分のお子さんじゃなくても養子をもらって幸せに暮らしている方もたくさんいますよ』という話をすることもあります。
それでも、100分の1の可能性でもいいから自分の子どもがどうしても欲しいという方には、とことん付き合います。
■卵巣を診て、これはもう…という時には?
もう卵が採れないということになったらダメです。
限界というのは必ずありますが、そこに至るまでは個人差がかなりあり、卵が採れる人も、採れた卵の質も良かったり良くなかったりという状態もありながら限界を迎えるわけですから、その見極めが大事になってきます。
まだ妊娠できる状態なのかどうか、それをしっかり見極め、時には治療をし、時には治療ができないことを告げて行きます。
その中においては、基本、年齢に関係なく、治療をしたいという方にはしてあげたいと思っています。
■例えばFSHが高くなってしまっている人はどのくらいまでだったら?
FSHは高くてもリセットすれば出てくる人は出てきます。0ではあ りませんから、工夫をすれば卵は採れるでしょう。
逆に、若い人でも手術歴とかがあって全く出てこない人もいます。
■リセットはどのように? ピルとかで?
いえ、ピルというよりは、女性ホルモンを投与して、FSHを下げたりとか、それでも下がらない人は、偽閉経用の薬で対処して脳からの指令を止めてあげると、FSHがでなくなってフッと卵が出てくることもあります。
いろいろ工夫すると、比較的卵は採れます。
ただ、どのような卵が採れるかで、その後が変わってきますよね。
■では、FSHが高くても、それだけであきらめることはないのですね。数値がいくつだからダメ、と悩む方もいますけど…?
そのように言われて来る方もいらっしゃいます。
『もうあなた閉経だよって言われた』と…。
でも、そういう方でも工夫をしてあげると、卵が採れて妊娠される方もいらっしゃいます。
ただ、卵が採れること=(イコール)妊娠することじゃありませんから、厳しい人には厳しいと言わなければダメですけどね。
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