患者さんの年代で治療に変化があっても大切にしていることは、みな同じことです。...①

矢内原ウィメンズクリニック 黄木詩麗先生のお話

2018年11月発行『i-wish ママになりたい 20代・30代・40代の不妊治療』

矢内原ウィメンズクリニック
黄木詩麗院長

神奈川県は大船の駅からほど近くにある矢内原ウィメンズクリニックは、赤ちゃんを授かりたいと願う夫婦のためのクリニックです。そして、姉妹クリニックには地元でも由緒ある産婦人科の矢内原医院があります。矢内原理事長とともに多くの患者さんを不妊治療から分娩まで診てきた黄木先生は、2018年から矢内原ウィメンズクリニックの院長に就任しました。不妊治療から出産まで診てきた医師だからこそ、大切にしていることが先生の診療にあります。


年代ごとの違いで言えること

■20代、30代、40代、それぞれの年代での違い、あるいは年齢全般的なことでの違いは何でしょう。

患者さんの年齢層が明らかに若くなっています。実年齢もそうですが、以前でしたら40歳ぐらいで、年齢が年齢なのでという患者さんが多かったのに、今は30歳で同じことを言って来ます。きっと不妊治療への敷居が低くなっているのでしょう。それも性生活にあまりトライせず、2周期くらいで妊娠しないので、どこか問題があるのではないかとあせってこられるケースが全般に増えています。

20代、30代の32~33歳くらいまでなら、まずは検査をして排卵日を診ることを2~3カ月して、タイミングを持とうねと話し、必要があれば人工授精や体外受精もあるという話はします。 そして、33歳を過ぎるあたりからは困難になることも考えながら効率も配慮して対応し、さらに40歳以上になると、「自然で待っていたら6~8年に1回くらいの妊娠確率だ」と話し、初診の段階から体外受精のことを話します。


若い方の検査結果と気持ち

■20代の方の中には、検査結果に何の問題もない方は、結構いるのでしょうか?

卵管が閉じているとか、精液所見が悪いとかであれば、原因のある箇所が分かりやすいのですが、何もなかった場合、やはり病院に早めに来ていると感じることはあります。

しかし、なかには体外受精までを一通り説明すると“私は、確率が高い体外受精を受けることができる”と、はじめから体外受精を選択するケースが増えています。


ご主人の協力

■ご主人の協力はどうですか?

先生 以前は、精液検査などでも“絶対嫌だ!”というご主人が3割くらいいましたが、今は年齢に関係なく、みなさん協力的で、嫌だ!と言うようなご主人も少なくなりました。

TESEの例をみても、若いカップルの方もいますから、早めに原因が分かって良かったという感じはありますね。


検査から治療の選択

■20代、30代、40代の方の検査結果や治療の違いは?

40歳になればAMH(卵巣予備能)も下がってきます。今まで採れていた卵子が採れなかったり、排卵周期に入れない方も多くでてきます。良好胚ができなくなって来て、治療自体もキツくなってきます。

42歳ぐらいまでは、排卵誘発剤に対して卵巣が何とか反応してくれれば、刺激をしてもいいかもしれませんが、43歳になると誘発剤も効かなくなって来ます。1個でも採れればいいのですが、負担も大きくなって来ますから、42歳、43歳ぐらいを境に体外受精の中でも、誘発方法の選択肢が変わって来ます。

そして、20代、30代、40代と年を重ねるに従って、身体も硬くなる、代謝が低下するなどの身体的な変化も起きてきます。それに応じた違いも治療にでてきます。

例えば、なかなか治療効果のでない方には、血流改善をすることで効果を上げる方もいます。

それも大事なことですから、当院では、漢方や栄養指導と運動に関しても積極的に考えています。

年代を問わず治療の効果がでない方に運動をしてもらうことで、8人いれば3人くらいの割で妊娠される方がでます。エビデンスで示すことは難しいのですが、非常に大きなことです。また、しっかりとした身体であれば妊娠中や出産時、その後の育児まで良い影響がでます。


患者さんの年代で治療に変化があっても大切にしていることは、みな同じことです。...②


矢内原ウィメンズクリニック 黄木詩麗先生のお話

2018年11月発行『i-wish ママになりたい 20代・30代・40代の不妊治療