夫婦二人の卵子と精子で子どもが授かり幸せな家族ができる、それが不妊治療です。

馬車道レディスクリニック 池永秀幸院長のお話

2018年2月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療バイブル』

馬車道レディスクリニック

池永秀幸院長


開院して16年経っても強く思っていること

■時が経っても変わらぬ池永先生がいますが、どのようなお気持ちで不妊治療を?

開院当時と比べ、今は治療の環境もずいぶん良くなっています。検査にしても新しい機器が登場し、インキュベーターも個別型やタイムラプス型などができ、培養液の質も向上しています。胚盤胞到達率も上がり、凍結保存の安定化で、今では凍結胚盤胞融解胚移植がオーソドックスなスタイルになり、妊娠率は当時の倍まで伸びています。

もちろん、排卵誘発法も一つでなく、刺激法による欠点、つまりOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の発症を補うようにアンタゴニスト法もあれば、低刺激周期や自然周期もあります。

これらの方法が増えた1つに、結婚や出産の高年齢化があります。ただ、治療には限界があるため、医師はさらなる工夫に手を尽くしているのが現状かと思います。

海外では、卵子提供や精子提供による体外受精や、代理母などが行われている国もあり、日本でも独自の考えでドナーの関わる生殖医療を行っている医師もいるようですが、それは不妊治療ではなく、別の意味での生殖医療だと思います。

私の不妊治療の定義は、不妊治療を志したころ、また開院した当初と変わっておりません。

それは、『不妊治療は、子どもを望む夫婦の卵子と精子で行うもので、子どもを授かれば、そこには家族の幸せがある』ということです。

その幸せへの協力ができることが、医師の醍醐味であり喜びなのです。 

それを強く思っていますから、治療の工夫に磨きをかけ、患者さんそれぞれへのアプローチを大事にしながら診療しています。 

そして、治療費は開院当時から値上げしておりません。


自然妊娠にこだわった不妊治療を大切にしています

■先生が大事にされているアプローチとはどんなことでしょう

私は不妊治療専門の医師として、体外受精(顕微授精含む)もおこなっていますが、つねに自然妊娠にこだわっています。なぜなら、子どもは夫婦に授かるものですから、夫婦の自然な愛情を大切にしていきたいと思っているのです。

なかでもタイミング療法を大事にしています。

治療では、タイミング療法か人工授精か、または体外受精で行くか、この判断は検査やご夫婦の様子から早めに結果を出します。

結果、体外受精であれば、先に話したように進歩とともに、妊娠率も上がってきました。しかし、自然妊娠となるタイミング療法での妊娠率は低いままです。その低い妊娠率のなかでいかに妊娠させることができるか、それも医師としてのやりがいかと思っています。

また、妊娠のはじまりは性生活で腟内に精子が射精されること。そして子宮に入り込むことです。それができるのは排卵期ですから、このとき、子宮は精子から何らかの信号を受けとっているのではないかと考えています。そこで、体外受精での凍結胚融解胚移植を行うときに、一般的には禁欲を伝えているかと思いますが、私は性生活をするように伝えています。

そして、この方法で今まで妊娠できなかった患者さんが妊娠するケースがあります。もちろん戻す胚は1個ですが、性生活をすることで心配していた多胎は全く起きていません。このことから胚移植時には、基本、性生活を持っていただくようにしています。

アプローチのなかでは、それが大きなことです。 


お子さんができたら大切に育てましょう

■患者さんにお伝えしたいことはありますか?

不妊治療でお子さんが授かったら、ぜひ大切に育て、幸せな家庭を築いていって下さい。それが夫婦の願いでもあり、私の願いでもあるのです。



馬車道レディスクリニック 池永秀幸院長のお話

2018年2月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療バイブル