体外受精は、患者さんのためにあるもの。…②

おち夢クリニック 越知正憲院長のお話

2018年2月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療バイブル』

培養室・タイムラプス型培養器



お手本は体内環境。培養室がバックアップしていること

■不妊治療では培養室が大きな意味を持つといいますが、培養室で大切にしていることは何でしょうか。

採卵後、卵子は培養室で預かり胚移植のときまでお世話します。本来、卵子は体の中にありますが、採卵手術によって体外環境に出されることで大変なストレスがかかります。将来、命に結びつくかもしれない貴重な患者さんの卵子ですから、大切に扱うのは基本中の基本です。ですから培養環境は、できるだけ卵子や精子、胚にとってストレスが無いよう体内の環境を模して守っていくことが重要です。

胚を育てるインキュベーター(培養器)や培養液の選択も大切です。胚の成長を確認するためにインキュベーターから出し、顕微鏡で見ますが、その際にかかる胚のストレスを軽減することも重要です。ですが、どれだけ技術が高くても、小さな胚にとってはストレスがかかります。そこで胚を出し入れすることなく培養できるタイムラプス型のインキュベーター(培養器)が発表された時、私たちは、実際の胚培養をするためにメーカーの技術者とともに調整し、国内でも一早く取り入れました。

このタイムラプス型のインキュベーターを今では10台設置し、ほぼ全症例で使用しています。 

タイムラプス画像で胚の状態を確認し、さまざまな胚の情報を読取り、さらに成績を上げることができるようになりました。


培養士も患者さんととともに育ちます

■培養士にとっても、患者さんを第一に考えていくことが大切なのですね。

体外受精では培養室の働きが要となります。培養室は生命の発生となる場ですから、培養士の技術はもちろん資質も問われます。

培養環境は、設備などのハード面だけでなく、培養士の技術や知識などのソフト面をしっかり整えていくことが、卵子や胚にとって良い環境づくりになります。そのためのトレーニングも欠かせません。

私たちのクリニックには厳しいカリキュラムとトレーニングがあり、キャリアを積んだ培養士が高い技術と倫理観で、ご夫婦のために努めています。

その中で、培養士は胚移植前に胚の状態などを説明し、直接夫婦の声を聞くようにしています。そうすることで、自分たちがご夫婦から預かっている卵子や精子、胚の大切さ、そしてご夫婦の希望に対して結果を出すことの大切さを強く思い続けることができます。

また、培養室の作業は機器類の進化もあり、働き易くなってきた面もあれば、その進化に合わせ、常にハイレベルでいなければならないため、日々の努力が必要です。



医師と患者のもと、看護師はより優しいサポートを

■看護師さんは、どのようなことが大切になりますか?(看護師長にうかがいました)


看護師は、一般的に行う看護業務において、医師と患者さんをつなぐ役目がありますが、患者さんには不安もありますから、気持ちに寄り添っていくことが大切です。

そのために、初診やふだんの診察、検査や処置、そして待ち時間の患者さんの様子などにもアンテナを張り、何気なく、けれどもきめ細やかな対応で治療をサポートできるよう、スタッフ同士も連絡を密にしています。

ただ優しく柔らかに接するばかりでなく、厳しくなることもあります。例えば採卵手術中の動いてはいけない時に、厳しく声をかけて患者さんの安全を守ります。それ以外は、そっと手を握って手術の経過を説明します。患者さんの安全を守り、気持ちを落ち着かせるサポートの1つです。

薬に関しては、処方する薬剤や注射をわかりやすく説明することが大切になります。

治療に関する質問にも、治療方針や医師の意図がしっかり伝えられるよう、質の高さと情報の深さも要求されます。ですから、治療に関する情報に追いついていくために、学ぶことや緊張の連続です。その上で私たち看護師は、患者さんお一人おひとりがストレスの少ない環境で治療が受けられるよう、患者さんに寄り添っていなければならないと思っています。

そして、ご夫婦にお子さんが授かることは、本当に嬉しいことです。



体外受精は、患者さんのためにあるもの。…①


おち夢クリニック 越知正憲院長のお話
2018年2月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療バイブル

i-wishママになりたい

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