体外受精は、患者さんのためにあるもの。…①

おち夢クリニック 越知正憲院長のお話

2018年2月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療バイブル』

おち夢クリニック
越知正憲院長


自然に排卵する卵子に注目し、質の良い卵子を得ることから良好胚を育て、単一胚移植で妊娠を目指す。

おち夢クリニック名古屋・越知正憲医師は、この方針で自然周期体外受精を行い、複数胚移植と代わらない妊娠率と一桁以下の低い多胎率を実現してきました。それは、まだ日本産科婦人科学会でも単一胚移植を原則にする以前、かつて不妊治療が多くの多胎妊娠を生み周産期医療を疲弊させていた頃からです。そして、かれこれ10年以上が経ちますが、なぜ、自然周期体外受精なのか?  

そのお話を改めてうかがいました。

 

患者とともにあること

■先生の考える不妊治療の原点はどこにあるのでしょう。

不妊治療は、患者さんのためにあるものです。それは一般不妊治療でも体外受精でも、患者さんの健康を損なうこと無く、最善の方法で妊娠に導くことを考えて行わなければなりません。それには、患者さんが本来持っている妊娠する力を最大限に生かすことが大切で、医療はそれをサポートするものです。

それを突き詰めて考えていけば、自然周期の良さがはっきり見えてきます。原点は、そこにあります。


自然周期体外受精のポイントとメリット

■具体的にどのような診療を行っていくのですか。

はじめに、卵を良い形で治療に活かすために、卵巣内の卵がどのような状態にあるのか、情報を集めます。ここではホルモン検査とエコーによるモニタリングが重要になります。

では、ポイントをわかりやすく追ってお話しましょう。 

❶卵巣内の様子を把握

 ホルモン検査で月経周期における卵巣内の様子を把握して、その方の排卵のクセなども知ることが必要です。

❷自然妊娠の流れ

 性生活からの妊娠は、どなたも同じように射精、排卵、受精、着床が滞りなく起こることが必要です。そのどこかで問題や障害があって妊娠が成立していないわけですから、何が原因になっているのか、妊娠を望んで性生活を送ってきた期間、検査や実際に行った治療から考えて適応する治療を行います。

❸体外受精の排卵誘発

体外受精が必要となったとき、採卵する周期に質のいい卵子が得られるように準備することも大切です。そのために採卵周期前には十分に卵巣を休ませたほうがいい方もいます。十分に卵巣を休ませることで、採卵周期にはよりよい状態で卵巣が働いてくれるでしょう。

排卵誘発方法は、❶の情報をもとに、採卵周期のホルモン値などから決定します。その方の持っている力を十分に発揮できるよう、サポートするように薬とその量を決めて、血液検査や超音波検査で卵胞の成長を確認していきます。

そのためにAMHの検査機器も導入し、院内で1時間もかけずに結果を知ることができ、採卵周期のAMH値をすぐに反映することができます。

排卵誘発法の決定にはAMH値も重要です。

また、多くの薬を使う調節卵巣刺激法で心配される卵巣過剰刺激症候群を引き起こす心配がないことも自然周期法の特徴となります。

❹採卵日の決定

卵胞が十分に成長することが、卵胞の成熟につながります。血液検査と超音波検査から十分に成長したと判断できたら、採卵日を決めていきます。

❺土日でも採卵。緊急な採卵も

採卵手術日が土日になる場合もあります。中には予測よりも早くに排卵が起こると思われる方もいます。人それぞれクセもあり、周期によっても違ってきます。そういった方には、すぐに対応できるように緊急採卵手術が行える態勢を整えておくことも重要です。

これは卵巣が決めることなので、それに合わせて患者さんも医師も動かなくてはなりません。いい状態で卵子を得るためには、卵の状態に合わせて患者さんも医師もスケジュールを変更しなくてはならないこともあります。

❻採卵数

採卵では両卵巣から数個、卵巣機能の良い方では5~7個の成熟した卵子が採卵できます。

自然周期だから、採卵数は少ないということはありません。もともと持っている卵巣機能によって違ってきます。

また、アロマターゼ阻害剤を使って卵の成長をサポートすることで小卵胞から成熟卵子が得られるケースもありますので、複数の卵子を得られることも少なくありません。

❼子宮は1人用

胚は単一胚移植を行います。これは、日本産科婦人科学会が原則単一胚移植と会告を出す前から行ってきました。そのため、これまでの多胎率は、多い年でも1%あるかないかくらいでした。不妊治療は、妊娠すればいいわけではありません。ママとパパになるための治療ですし、赤ちゃんも健康に生まれてくることが一番です。

人の子宮は1人用ですから、移植する胚も1個です。それも自然周期体外受精の大切なポイントです。

このように患者さんとともにあること。患者さんの幸せがともにあること。それが生殖医療の大切さであると考えて、自然周期を中心に不妊治療を行っています。

そして、十分に良い結果が出せるようベストを尽くすことを診療の原点としています。



体外受精は、患者さんのためにあるもの。…②


おち夢クリニック 越知正憲院長のお話

2018年2月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療バイブル

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