患者さんにとって、いいと思えることを取入れ、ベストな治療を進めています…②

キネマARTクリニック 渋井幸裕院長のお話

2017年4月発行『i-wish ママになりたい 赤ちゃんを授かるための検査』

治療と手順

 患者さんの中には、できるだけ体外受精は避けて欲しいと思われている方から、その逆に早く結果を出したいから体外受精をすぐに希望される方もいらっしゃいます。

 しかし、治療はエビデンスに基づき、適応は診療で詳しく説明しています。

 体外受精を進めていく上での判断材料としてAMH検査はよい参考となり、培養を進めるのにタイムラプス型インキュベーターが役立ちます。

 採卵に向けての誘発ではマイルドな方法をベースにしていますが刺激周期法も行い、患者さんそれぞれに合わせた治療法で行っていきます。


無駄な治療をしないために

 より丁寧に、そしてしっかり診たいときの例えとして、「妻や妹など、身内に行うような治療で」と言ういい方をすることがあります。私も同様にすべての患者さんが大切ですから、そのような気持ちで治療を行っています。

 まずは治療の適応をしっかり診て、必要なことは必要なだけしっかり行うこと。それは何も体外受精に限ったことではなく、タイミング療法でも人工授精でも同じです。

 原因不明のときは、ステップアップ治療をすることもありますが、タイミング療法、人工授精、体外受精、それぞれをしっかり診ることが基本にありますから、そこから何か発展的な治療法はないか、それぞれの治療を見直し、何かヒントはないかなどを見つけていくことも考えていきたいと思っています。

 一般不妊治療よりも妊娠率が良い体外受精であっても、それで8割もの人が妊娠するわけでなく、20~30%(移植当りの妊娠率)です。

 患者さんの中には、体外受精なら、すぐに妊娠できるのでしょう? と思われている方がいますが、そう簡単なことではありません。患者さんには、確率論からだいたい3回くらいが目安になることをお話していますが、何とかそれよりも少ない回数で結果を出せるように、探究心を深め、日々色々なことを頭の中で組み合わせてみては模索して、イメージしながら診療に臨んでいます。


検査と治療と

 今一度お話をしますが、とくに注意して診ていきたいことの一つが検査です。

 検査は、患者さんのからだの状態を伝えてくれるものですから、その検査のあり方や結果から導きだせる治療に、さらに何か工夫はできないものか、それぞれの患者さんにフィットする治療方法があるのではないかと考えます。

 20代、30代、40代と、年齢によっても検査から導ける治療法は変わります。

 助成金に年齢制限が設けられたこともあってか、40才以上の方が少し減っている傾向にあり、それは生殖補助医療が始まった頃に戻っているようにも思えます。


患者さんへのメッセージ

 最近の傾向として「患者さんのニーズに合った治療」という言葉が必要以上に先行してしまい、インターネットを中心とした情報過多の状態を医療サイドはもとより患者さんも消化しきれていないケースが多くなってきています。

 私たちは、医療の本質を見失わないよう、誠実に対応していきたいと考えています。



治療は、その人自身を診ることそこにある個性を見極めること…①


キネマARTクリニック
 渋井幸裕院長のお話
2017年4月発行『i-wish ママになりたい 赤ちゃんを授かるための検査

i-wishママになりたい

不妊治療専門誌i-wishママになりたいの中で取材したクリニックを紹介しています。