夫婦間にズレのない治療をするために…②
京野アートクリニック高輪 京野 廣一理事長のお話
2017年1月発行『i-wish ママになりたい 男性不妊』
新鮮な精子と新鮮な卵子で
とくに自分でTESEを行うのには、大きな理由と意味がありました。
他院の泌尿器科に依頼してTESEにより回収された精子は、一度凍結されて運ばれてきます。ですが、精子は凍結に弱く、妊娠率が下がってしまいます。たくさん精子が採取できたケースはまだいいのですが、極わずかしか精子が採取できなかった場合、凍結精子ではますます妊娠が難しくなってしまいます。
その参考として、AID(非配偶者間人工授精)を行う場合、新鮮な精子を使うことができた時代の妊娠率は高かったのですが、今現在は凍結精子を使うことが決められていて、妊娠率は極めて低く2~3%です。
提供精子は若い男性から得るもので、いい状態の精子であるにも関わらず妊娠率が低いわけです。ですから、精巣から回収した精子を凍結することが、どれだけ妊娠を難しくさせるかは容易にわかっていただけるでしょう。
自院でTESEができれば、採卵手術日に合わせて行うことができ、新鮮な精子と新鮮な卵子を受精させることが可能です。
このほうがいい状態で治療に臨めるわけですから、結果として妊娠率も高くなっていいくのです。
TESE(精巣内精子回収術)の回収率は?
男性不妊の中でも重度となる無精子症ですが、これには閉塞性無精子症(OA)が2割、非閉塞性無精子症(NOA)が8割あると言われています。
シンプルTESEは、閉塞性無精子症(精子はつくられているが通路に問題がある)に適応し、そのほとんどのケースで精子がみつかり、お子さんを授かるご夫婦もたくさんいます。
MDーTESEは、1999年にコーネル大学のシュレーゲル教授が発表した手術方法です。
顕微鏡下で太くて白い精細管の中に存在する精子を発見し回収する方法であり、非閉塞性無精子症(精子がほとんど作られていない)に特に適応し、30~40%のケースで精子が回収されます。
また最近では、無精子症の原因となる遺伝子にAZF遺伝子というものがあり、この遺伝子を検査することによって、MD–TESEをしたとしても、精子が回収できない方などを事前に簡単な検査で知ることができるようになってきました。
男性の年齢と妊娠の関係は?
男性に不妊原因がある夫婦は、比較的女性の年齢が若い傾向にあり、TESEが必要なケースでも、妊娠する例は多くあります。
妊娠の要は卵子にあり、その質が年齢とともに低下することは、みなさんもご存知でしょう。実は、男性の年齢も妊娠に関係しているのです。
加齢の影響は男性にとっても大きく、具体的には精液の所見が悪化し、精子の質も低下します。 一般的には35歳を境に、男性の妊娠する力が減少していくといわれ、体外受精に関していえば、40歳以上の男性は20代の男性と比べて、治療の不成功率も1.7倍になるなど多くの報告がされています。
男性はいつになっても子供ができるように考えがちですが、年齢による影響は確実に出てきますから、できるなら早く妊娠にトライしたほうがいいのです。
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