進歩は工夫とともに…その③


IVF詠田クリニック院長 永田由美先生のお話 
『i-wish ママになりたい 不妊治療の今』より 


 治療ではプライバシーを守ることも大事 ! 
 でも、オープンにすることも大切だから見える培養室に




見える培養室。 そして、見られる培養士とラボコーディネーター 

 培養部長の泊博幸さんは、変化について次のように話します。

 「見える培養室にすることについては、特に抵抗はありませんでした。院内の様子からもわかっていただけるように、患者さんのプライバシーをきっちり守る部分と、私たちスタッフがオープンにして患者さんと身近でいる部分の両方が存在しています。

  今までのワンフロア態勢ではできなかったことがフロア増設とともに自然にいい形で実現できたと考えています。

  培養室が見えるということは、もちろん見せても大丈夫だということです。

  もともと培養士の技術レベルは、患者さんに培養室を見せる、見せないに関わらず向上させるものですし、それはこれからも続いていくものです。そのことに関して、とくに何かが変わるということはありません。

  ただ、見せるということで、整理整頓、掃除などについては、これまで以上に気を配るようになりましたから、その意味では変化がありました」 


<培養士を助けるラボコーディネーター>

 「また、ここでの培養士のレベルアップには、ラボコーディネーターの存在が欠かせません。ラボコーディネーターのおかげで、培養士は培養士としての本来の仕事に集中し、力を発揮できるようになってきました。 

 培養士には、検卵、受精、培養、凍結、融解とさまざまな作業があり行程もあります。それらをよく観察して、次につなげるためのデータづくりや検証も重要な仕事となります。それを十分に行えるよう、タイムスケジュールの管理、整理整頓や掃除、備品の管理、細かなメモなどをラボコーディネーターが行います。 

 これまでは、採取できた卵子の数を培養士がメモして書き込んでいました。しかし、培養関係の仕事をしながら、カルテを書き込むのは大変でした。それを今は、下準備なども含めた多くの作業をやってくれているのです」


<取り違え防止にも 大きな効果>

 治療施設でのラボコーディネーターの役目は、主に患者さんの卵子や精子、胚の取り違え防止のためのダブルチェックなどであると思います。それが少しずつ進んでいるようです。ラボコーディネーターの村上真央さんは話します。 

 「最初はダブルチェックをすることが主な仕事だったのですが、事務処理、備品等の管理、カルテへの記入やその準備などの仕事を少しずつ理解し、手伝うようになりました。それをきっかけに、培養関係の知識もさらに増え、これまで培養士が行っていた細かな事務作業までを請け負うようになってきています。 

 ですが、培養に関すること、不妊治療に関することについてはさらに知識も必要ですし、より深い部分での理解も必要と考えています。 

 その意味でも今後も努力が必要ですが、私たちが培養士をサポートすることで、患者さんたちの喜びにつながっていくものと思えば、それが良い励みにもなります。これからもラボコーディネーター一人一人の能力も確認し合い、皆がレベルアップできるよう努めていきます」 

 お二人の話から、それぞれのスタッフが専門分野で十分に力を発揮し、仕事ができるよう常に考え、体制を整えていることが分かります。その意識がスタッフ皆に浸透していることも分かります。 


<新しい環境で、スタッフそれぞれの意識も高まる >

 医師は医師として、看護師は看護師として、そして培養士は培養士として。また、受付は受付。事務は事務として、それぞれの専門分野で、それぞれがスペシャリストとして仕事をする。その上で、皆が患者さんの願いに届くよう医療を充実させていく。まさに 詠田医師が考えるチーム医療が充実し、連携も深まっているようです。 


クリニックの最前線 スタッフと設備の好バランス 効率的で安全面での配慮も万全

<見える培養室と不妊治療の最前線>

 新設されたフロア見学、そしてスタッフのお話を伺うことで、今ある不妊治療の現場の一つの姿が見えてきました。そこには医師の方針と考え方、そしてスタッフの努力がいろいろな形で繰り広げられ、様々な表情を持っていることが、あらためて分かりました。 

 IVF詠田クリニックでは、院長の詠田医師の発想と力がクリニックの表情を進化させ、その進化にはスタッフそれぞれの工夫があり、生殖医療の最前線を担っているのだと思いました。 


<看護部門の意識は さらに高まりを 見せている>

 看護師長の愛甲さんが、今回のフロア新増設にともなう変化などを、看護職のお話も含めてお話してくれました。  「不妊治療は、一般の病気とは違い、治療結果が必ずしも感じ取ることができ、見えることばかりではありません。結果として妊娠であればよいのですが、それは全員に約束されるものではありません。そのような状況の中、見える培養室や院内ツアーは、患者さんの安心感につながり、治療の励みにもなっていると思います。患者さんを全力でサポートする看護職にとって、とても有意義に受け止めております」 



進歩は工夫とともに…その①
進歩は工夫とともに…その② 


 IVF詠田クリニック院長 永田由美先生のお話 
(2014年11月30日発行 『i-wish ママになりたい 不妊治療の今』の記事です  )

i-wishママになりたい

不妊治療専門誌i-wishママになりたいの中で取材したクリニックを紹介しています。