精子が採取できれば妊娠は可能です。腫瘍や糖尿病などの疾患があり精子数が少ない場合は、精子凍結をお勧めします。...②
オーク住吉産婦人科 多田佳宏先生のお話
2019年1月発行『i-wish ママになりたい 男性不妊の検査と治療』
ガン克服後の不妊治療
■以前と比べて増えているのはどんなケースですか?
悪性腫瘍を克服されてから、不妊治療にいらっしゃる方が増えました。以前は悪性腫瘍の治療で精一杯で、不妊治療のことまで考えられなかったと思うのですが、最近はガイドラインで若い方で抗がん剤治療をする場合は、生殖医療について説明をすると示されています。
理想的なのは抗がん剤治療をする前に精子を凍結保存しておく方法ですが、実際のところ凍結保存をされていない方もいらっしゃいます。そのため抗がん剤治療の影響で精子がまったくいない状態で不妊治療に訪れる方も少なくありません。
もちろん、がん治療に集中されて他のことは考えられないと思いますが、精子数が通常なら1回採取すれば3~4本(3~4回分)は確保できますので、2~3回採取しておけば十分です。ご自宅で採取したものを奥様にご持参いただいてもいいですが、可能なら採取してすぐ精製・凍結したほうがいいのでクリニックの採精室で採取していただくのが理想です。
精子細胞があればホルモン投与で成熟する可能性も
■男性不妊で新しい治療は?
精液検査をして「精子がいない」と診断されても妊娠の可能性はあります。精巣内精子の回収(TESE)をして妊娠される方もいます。
また、無精子症でも精子のもとになる精子細胞が存在すれば、数は少ないですが精子ができることがあります。治療法は、下垂体ホルモンを投与して精巣を刺激します。TESEを1回して精子を回収できなかった場合でも、3カ月~半年程度、下垂体ホルモンを投与したうえで、もう一度TESEをすると精子を採取できることがあります。
精子は熱や疲れの影響を受けやすい
■病院に行きにくいという男性もいますが、どうですか?
精液検査は1回1000円程度でできますから、検査したいと思ったら来院していただきたいと思います。精子数が少ないという結果が出るとすごく落ち込まれる方もいますが、精子数はちょっとしたことで増減します。ですから、あまり心配なさらずに足を運んでください。
からだが疲れてきたとき、最初に機能を落とされるのが精子です。からだがパワー不足に陥ってどこかの機能を弱めるとなったときに、「じゃあ、少し心臓を止めるか」というわけにはいきませんよね。ですから、生命維持には関わりのない精子からカットされるわけです。
これはインフルエンザのときなどに顕著に見られます。39℃の高熱が5日間出た方は2カ月経っても精子がいませんでした。さらに2~3カ月後には元に戻りましたが、高熱が出ただけで精子はいなくなるのです。
なかには不妊治療に消極的なご主人もいるでしょう。そのときに奥様が非協力的だと責めたり、怒ったりしては逆効果です。せかさないように、なおかつ病院に足が向くように、何度か優しく話をしていただければと思います。
精子が採取できれば妊娠は可能です。腫瘍や糖尿病などの疾患があり精子数が少ない場合は、精子凍結をお勧めします。...①
オーク住吉産婦人科 多田佳宏先生のお話
2019年1月発行『i-wish ママになりたい 男性不妊の検査と治療』
0コメント