望んでいることは一つでも、何が必要かは、一人ひとりそれぞれに違います。それに応えるための診療を!...①

明大前アートクリニック院長 北村誠司先生のお話

2018年4月発行『i-wish ママになりたい 不妊のリアルお悩み相談室』

明大前アートクリニック
北村誠司院長


東京は杉並区、京王線の明大前駅から徒歩5分、親しみやすい繁華街を抜け甲州街道の陸橋を渡ったところに明大前アートクリニックが誕生しました。

 「あれ? この先生、どこかで…」と思った方もいらっしゃるでしょう。

 「長年、勤めた病院から心機一転、開院しました!」ということで、早速、クリニックを訪ねました。

 開院された北村先生ですが、そのお話ぶりはこれまでと変わらない、一本筋の通った、どこか職人気質なところと、今までとは少し違った、新鮮な軽やかで瑞々しさを感じます。

 さて、北村先生は、どうしてこの時期に独立、開院をされたのでしょう。

 先生に、お話を伺いました。


治療を受けるご夫婦のために

不妊治療をする病院には、大きな病院から小さな病院までいろいろあります。例えば、大きな病院を複数名の医師がいる病院とし、小さな病院を医師が1人しかいない病院として考えてみましょう。患者さんの数も、症例数も複数名の医師がいる病院の方が多いでしょう。しかし、今では大きな病院も小さな病院も大きなレベルの差はないと思います。

 では、患者さんにとって、どちらがいいのか? と言ったら、人それぞれ考え方もありますから、一概にどちらがいいとは言えません。ただ、複数名の医師のいるところでは、医師たちが治療方針を1つ、考え方を1つにしておくことは意外と難しいことだと感じています。

 担当医制になっていればまだいいのですが、それでも担当ではない別の医師が診察にあたることがあるかもしれません。その時に、患者さんの治療方針を1つとしていても、医師それぞれの考え方や解釈が微妙に違い、それが患者さんの戸惑いや不安につながることがあります。

 また、例えば同じ質問を2人の医師にした時に、少し違った答えが返ってくることもあるでしょう。

 「先生によって、言うことが違う」

 これは、患者さんにとって、とても大きなことだと思います。患者さんが治療について不安を持つことが、ストレスや不満につながることもあるでしょう。治療方針や考え方など、治療をする上で根本的なことであれば尚更のことです。

 子どもを授かりたくて通院しているのに、その病院がストレスを生んだのでは元も子もありません。これは患者さんの不利益にもなることです。

 だったら、コツコツと一人ひとりの患者さんとじっくり付き合えるような診療をしようと考え、開院にいたりました。


大切なつながり

開院してまだ間もないですが、広い地域から患者さんがお見えになります。産婦人科医になって30年近くになりますが、新米医師だった当時、妊婦だった患者さんの娘さんをとり上げ、最近では、その娘さんを診察することもあります。世代を渡ったつながりができ、長くお付き合いをする患者さんもいて、大変ありがたく思っています。

 また、長年に渡って産婦人科、不妊診療を行ってきた経験とつながりを活かし、杉並と世田谷の地域を担う総合病院だけでなく、東京および神奈川の大学病院とも連携して、婦人科系の手術が必要な時、また他科診療が必要な時など、さまざまな状況に対応できるように、そして男性不妊に関しては、荻窪病院と連携し、無精子症の方の精巣内精子回収術(TESE)などもできるよう、態勢を整えました。

 スタッフにも恵まれ、これまでのようにたくさんの患者さんを診ることは大変になりましたが、一人ひとりにかけられる時間は多くなり、患者さんにとっていい環境で治療ができるようになったと思います。


アートクリニックだから体外受精しか行わないということではありません

クリニック名に高度生殖補助医療を指すアートとあるので、体外受精がメインと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、一般不妊治療の適応となる方、そして男性不妊(TESEなど)の方含め、高度生殖補助医療まで幅広く専門的にできるクリニックです。

 不妊治療は、タイミング療法であろうが人工授精であろうが高度な知識と技術が必要です。仮に体外受精が適応となる検査結果が出ても、治療方法によっては、タイミング療法や人工授精で妊娠を目指すことができるようになることもあります。例えば、卵管狭窄や閉塞があっても、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うことで、卵管の通過性の問題がクリアできれば妊娠する治療法の選択肢も広がります。そのため、内視鏡の技術も取り入れて、妊娠し易い状況をつくるよう努めます。

 また、心と体は1つです。見通しがなかなか立たない不妊治療では、「なんで、私だけ」と悲しく辛く思うこともあるでしょう。そこで、治療に関する希望や悩みを伺って、ご夫婦に寄り添いながら治療を進められるよう、不妊カウンセラー・臨床心理士がじっくり話をお聞きします。


望んでいることは一つでも、何が必要かは、一人ひとりそれぞれに違います。それに応えるための診療を!...②


明大前アートクリニック 北村誠司先生のお話

2018年4月発行『i-wish ママになりたい 不妊のリアルお悩み相談室