産婦人科をホームドクターに…その②
三軒茶屋レディースクリニック院長 保坂猛先生のお話
『i-wish ママになりたい 40歳からの不妊治療』より
患者さんにとってまだ敷居の高い不妊治療! 早期治療を呼びかけるだけでなく婦人科がもっと身近な存在になれたら…
同じ治療を繰り返すだけでなく、変えるアイディア を提供する
■日常生活での注意点など、治療以外に伝えたりすることはありますか?
問診表にも記入するようになっていますが、喫煙は止めたほうがいいですね。女性だけでなくご主人も同様です。喫煙がからだに悪いのは皆さんわかっていると思いますし、妊娠した場合、胎児に悪影響を及ぼしかねないのも知られています。が、もっというのなら卵巣にも悪いのです。
先々のことを考えてもタバコは止めることをオススメしています。
それから睡眠時間も大事だと思います。ただ、仕事によっては睡眠時間を確保したくてもできない人もいますし、「仕事をかえなさい」というような、その方の生きる術を奪うようなことは言えないですし、難しい方もいらっしゃるかもしれません。
その他、患者さんによっては鍼など補助的な治療の情報をお伝えすることもあります。クリニックで同じ治療を何回も繰り返しているよりも、少しずつでも何か変えるアイディアをお伝えしたいですからね。状態を良くするためのポジティブな情報を発信するのも役目かと思っています。
不安を抱えながら治療している患者さんも少なくありませんから、そういう不安の芽を少しでもつんであげることもします。それには、何でもいいからやればいいという話ではなく、ベースとして、論文で発表されたものなど、しっかり検証できているものに関してこちらから情報を伝えることが大事だと考えています。
スタッフ全員で 治療をバックアップ!
■患者さんの不安やストレスを軽減する方法として取り組んでいることはありますか?
培養士も看護師もカウンセリングの資格を持っていますから、スタッフ全員で患者さんをバックアップできるようにしています。
何も私だけが窓口になる必要はありませんし、私が患者さんお一人ずつと話す時間はどうしても限られてしまいますからね。
次の治療に向けて気持ちをつなげられるようにスタッフ全員でサポートしています。そして、サポートした患者さんについては、その情報をスタッフ全員で共有し、みなが対応できるようにしています。
不妊治療は専門的なことで、難しいケースも多く、患者さんが自分でしっかり理解したいと思っても難しい部分もあるでしょう。理解できないことでジレンマを感じることもあると思います。しかし、そういう難しい話は別として、まず、自分がいやなことは何か、たとえば「待合室で待っている時間がイヤだ」とか、そのようなことでもできるだけ話してほしいと思います。治療のことについても、私より同性の看護師のほうが話しやすいということであれば、ぜひ看護師に話してほしいですね。そうして話をするなかで一人でも悩みや不安を解消できたとしたら意義のあることだと思っています。ですので、いつでも相談にいらしてください。
勇気を出して病院に来れば、できる治療がある!
■ずっと仕事をしてきて、なかなか病院に来られなかったという方もいると思いますが…
患者さんは働いている方が多く、40歳くらいになるとキャリアを重ねてきた女性も多くなります。そういう方は、ずっと前から治療を受けたいと思っていたけれど、通院するのが難しいと悩んでいたはずです。そういう問題を抱えながらも、一歩踏み出して病院に来てくれた方には「よく来てくださった」と思います。クリニックに来てくれたら、今、私にできる治療ができるわけですから。
このように、本当は子どもがほしいけれど、仕事しながらの通院は難しいと感じている女性も少なくないと思います。そういう敷居の高さが、不妊治療の現場にはまだあるのだと感じますね。
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